’00 夏休みツーリングレポート
団長、北の大地に立つ!!
第4日目 8月15日
6時30分に目が覚めた。外に出てみると既に何人かが旅立ちの準備をしている。
たき火にあたりのんびりする。ポットとインスタントコーヒーが出てきてセルフでいただく。
北海道に来てから朝のコーヒーが一番旨い。
起きてきては飛んでいく。ライダーは渡り鳥のようだ。
そろそろ私も飛ぶ時間が来たようだ。荷物をまとめ出発した。今日の目的地は明日の最北端宗谷岬到達の為に稚内に入ることである。
天候は生憎の曇り空。楽しみにしていた美瑛の丘を走る。ライダーハウスでもらった案内図を見ながらお決まりのスポットを見て回る。
ここで一つ気が付いた。○○の木等あるがそばによればただの木である。
▲ マイルドセブンの丘
少し離れた丘の上から見る。曇空バックだがなかなか美しい。北海道に来て感じたのは、風景の奥行きが違うということだ。前景、中景、遠景とアナログ的に広がっている。
結構時間が過ぎている。美瑛の町を後にした。
▲ ケンとメリーのポプラ
旭川を通過して道道に入る。98号、72号と走り、途中一面の蕎麦畑の中を走る。
国道275号に入り政和温泉道の駅「ほろかない」で休憩することにした。
▲ 辺り一面の蕎麦畑
日帰り温泉施設もあり入湯料は500円である。なかなか良い湯で結構混んでいる。観光客が多いのだろうか?気が付いたことがある。これまで入った温泉はしょっぱい。海が近いからなのであろうか?
露天風呂に入った瞬間に大雨が降ってきた。
露天温泉に入りながらの雨は心地よい。冬の露天風呂に雪といい勝負だ。
あ!ヘルメット放置したままなのを思い出した。
まぁ、走りながらの雨よりは良いだろう。あきらめることにした。湯上がりの一杯といきたいところだが、麦茶を飲んで昼食をとることにした。
やはり地の物ざる蕎麦を注文。結構待たされた。本場は注文されてから蕎麦の実をひいているのだろうか・・・
相席させていただいた夫妻と歓談していた。「どちらから?」と聞かれ「東京からです」「バイクですか?」「そうです」「大変ですね」・・・
もうこの会話にも飽きてきた。最初のうちは聞かれて答えるのが楽しかった。
やっと蕎麦がやってきた。期待も十分膨らんでいる。
「いっただきま〜す」
はずれ!!頭の中で鐘の音が一つ聞こえた。
地の物とはこんな物であろう。
先ほど歓談した夫妻に別れを告げ旅路を急いだ。国道を進み、次のポイントに到着した。
朱鞠内湖(しゅまりないこ)は道内最大の発電用人造湖である。
森林に覆われていてほとんど湖は見えない。朱鞠内パーキングでやっと見渡すことが出来た。
▲ 朱鞠内湖 ▲ これが見える範囲
美深に向かって走り出す。軽いワインディングに入って後ろから赤いZZRにロックオンされていることに気が付いた。途中クリスタルパークに立ち寄るはずが通過してしまった。
自分がsecure所属であることを恨んだ。離れないまま美深の駅前に出た。
ZZRはピースサインを出して南に走っていった。なんと爽やかなんだろう。私は北に向かった。道の駅びふかに到着。ここは羊乳ソフトとコロッケが人気商品である。
当然ソフトを食べてみる。もの凄い勢いで溶けていく。味は濃厚なだけで旨いって感じでは無かった。
次にコロッケである。ここには栗色のじゃがいもがあってクリジャガコロッケを食べてみる。
10分ほど列んでやっと買うことが出来た。手の中であつあつのコロッケをほおばる。
はぁ〜普通だ。地の物に負けが多くなってきた。再び北に向かう。音威子府(おといねっぷ)から国道40号へ移り、海側に向かう。
刺激の少ない道が延々と続く。刺激になるのは時々降る大粒の雨だけである。
サロベツ原野に入り曇天も影響してもの凄く寂しい場所である。
お似合いのBGMがある。大滝永一の「さらばシベリア鉄道」がぴったりあてはまる。少しづつ辺りが暗くなってきた。ここで判断の時がやってきた。
キャンプをするかどうするか・・・
東京に電話をかけて天気の状況を聞いてみる。すると雨をかろうじて避けているのは今いるこの辺だけのようだった。
今晩は稚内でホテルに泊まることにした。少し自分が負けた気がした。稚内の駅に着き、観光案内の看板に書かれているホテルにかたっぱしから電話をかけた。
ようやく一件のホテルが見つかった。やはり5時を過ぎてから宿泊先を見つけるのは難しいようである。
となりではカップルが未だに電話をかけまくっている。なかなか綺麗なホテルで新築の匂いがする。チェックインして着替えをした。
GパンにTシャツ、それにレーシングブーツ・・・
ブーツの上にGパンの裾を被せてフロントに向かった。
フロントで近所のおすすめの居酒屋を尋ねた。「蝦夷の里」という居酒屋を紹介してくれた。見つけにくいとは聞いたが本当に見つからない。まさかという場所にあり、のれんは降ろしてあり店内は暗い。
何度か素通りして店内の様子をうかがう。焼き場におじさんが一人いて、女性従業員が4人もいる。なにやら怪しげである。
「ここは何時からですか?」と聞くと、焼き場のおじさんが「良かったらどうぞ!」と答えた。店内に入り辺りを見渡す。目の前には焼き魚と刺身それにつまみ数種が書いてあり値段は書いてない。
やべ〜やっちゃったよ〜
「何にしましょうか?」と聞かれさらに店内をキョロキョロ・・・
生ビール500円を見つけた。「生ください」と答えた。
「はい、おまち」生ビールが目の前に来た。
旨い!やはり旨い!なんといっても旨いのだ!!さぁて、何を注文するかを考え始めた。さらに怪しいことに気が付いた。
焼き場の後ろにすすけたメニューが貼ってある。なぜか値段のところに紙が画鋲で止めてある。紙から値段が少しはみ出て見えているがいくらなのかが分からない。
ゆっくりビールを飲んだ。私以外に客は来ない・・・
財布の中味を思い出す。
注文しようと口が開くがなかなか切り出せない。
あぁ面倒くさい!!値段を聞くことにした。
「あの〜ここにかいてあるのはおいくらでしょうか?」
おじさんが答える。
「焼き魚は700円、刺身はうに以外が700円、ウニは今高くて1200円」
ほっとした。ビールを一気に飲み干し、おかわりをした。「刺身は盛り合わせ出来ますか?」と聞くと「あ〜少しづつ色々食べたいんだね」
「出来ますよ」と答えた。「じゃあ、盛り合わせで!」と注文した。
さらに「ホッケ焼きお願いします」と注文した。調子に乗ってきたようである。
刺身の盛り合わせが登場した。
やべ〜、ウニがこっちを見ている。わぉ!アワビもあるし、ボタンエビその他いろいろ盛り沢山の刺盛りである。
さっきウニは高いって言ってたじゃないの・・・しかもメニューに無いアワビまで・・・私は開き直った。今晩俺は突き抜けてみせる!!冷酒を注文して更につまみを注文した。
なんだか酔っぱらってきた。もう怖い物はなにもない。すると客が何組か一気に入ってきた。やっと居酒屋らしくなってきた。
イカの塩からを注文した。これは絶品である。味は薄味だが旨味がある。
若い3人組が入ってきた。隣の席に座り、ビールと塩からを注文していた。ここの塩からは結構有名らしい。旨いわけである。さて、お勘定の時間がきました。
こっそり財布を覗いた。気持ちの中での会計は9600円だった。1万円を割るくらいであろう。
「お勘定お願いします。」
すると、「有り難うございます。4300円になります。」
腰が砕けた。
不安な気持ちで飲む必要はまったく無かった。なんとすばらしい居酒屋なのだ!
今回は良い結果だったが初めて入るアルコールを出す店には気を付けたいものである。外はもう暗闇に包まれていて商店街はシャッターを降ろしてある。時間はまもなく9時だ。
盆踊りの音が聞こえてきた。音のする方へ歩いていくと宿泊先の前の公園で盆踊りをやっていた。
ビール300円。夜店はすてきだ。早速一杯買って公園の石段に腰掛けた。
ここの盆踊りは生歌でみんな踊っている。民謡おじさん、おばさんが4.5人でとぎれること無く歌い続け、踊り続けている。
民謡の歌詞の中に「〜北の夏は短い〜」という一節があった。
先ほどの居酒屋でも言われたことを思い出した。
ここらでまともにバイクに乗れるのは1年に3ヶ月程度しか無いそうである。
北海道の短い夏が過ぎ去っていくのを感じた。
少しでも長く感じる為にもう一杯飲むことにした。
祭りが終わり、もうここは秋になったのであろう。
せっかくホテルなので汚い無精髭を剃り、荷物を整理し直した。
▲ 北の夏祭り
布団はフカフカである。ちょっと贅沢な気分になって部屋の明かりを消した。
明日はいよいよ最北端にチャレンジである。本日の走行距離 333km